【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
「あぁ雨竜?沙良ちゃんに…あれ持ってきてよ。」
晴竜さんが電話を切った。
『あれって……?』
「ふふっ…到着してからのお楽しみ。髪、俺なりに沙良ちゃんに似合いそうな感じをイメージしてみたんだけどさ、お任せってことで大丈夫?」
『はい…よろしくお願いします。』
晴竜さんは髪の裾を巻いたり、ワックスをつけたり、ピンで止めたりリボンをつけたり…あっという間にした事もないような素敵な髪型にしてくれた。
『……可愛い…自分じゃないみたいです…
ぁ…髪型が、っていう意味で…』
「うん…思った通り似合うね。可愛いよ、沙良ちゃん。今からもっと可愛くなるからね。」
裾を外ハネにしてバックをゆるくまとめ上げ、前髪を薄くしておでこが見えるようにするのが今時なのだと教えてくれた。
練習すれば自分でもできると言ってくれたけれど、無理だと思った。
晴竜さんはメイク用品を準備すると、丁寧に化粧水パックをしてくれた。
「約束通り、今日はメイクしてないね。
って言っても普段ファンデとリップくらいかな?」
『やり方が…よくわからなくて…』
「ふふっ…沙良ちゃんは血管が緑色で目の色が濃いブラウン…カラー診断はイエベのオータムだと思うんだ。芸能人でも美人が多いんだよ。メイクは鏡見ちゃダメね、サプライズ。」
椅子をグルンと回され、晴竜さんと向き合った。
顔に色々なものが塗られ、まつ毛もつけてもらい、チークやリップが施された。
不思議だ。
男の人に顔を触られても、緊張しないし、怖くない。
逆に、晴竜さんに触れられる部分が温かくて、安心した。
「さ、できたよ。見てみて…」
グリンと椅子が回ると
『え……コレ…私?』
鏡に映る自分の顔に驚き、思わず声が裏返ってしまった。
「ふふっ…思った以上の出来栄え。やっぱ綺麗だなぁ、沙良ちゃん。俺、椿呼んでくるね。」
晴竜さんが席を立つと、まじまじと鏡を見た。
人間て…メイクで別人になれるんだ。
いつもと何が違うのだろう?アイシャドウ…?
目のキワに入れられたアイライン…?真上に伸びたまつ毛だろうか…
「お待たせー…って沙良……なの…?」
『椿さん…晴竜さんに素敵にしてもらいました。』
椿さんは駆け寄ると、思い切り抱きしめてくれた。