第47章 エンダードラゴン
「グゥオオオオオ……!!」
ソイツは、地上に下りて来るなり耳を劈く程大きな咆哮をあげた。それから悪態を吐き始めた。
「小賢しい小賢しい小賢しい!」ソイツは暴れながら辺りの地形を破壊しまくった。「もう少しで出来るというのに! 邪魔が入っては俺様の完全なる力も戻らない!」
黒い鱗に鋭い鉤爪、大きな尻尾は地面に大きく投げ出されていて、仕切りに羽ばたく翼の音がよく響く。
「エンダードラゴン……」
私が呟くようにソイツの名前を口にすると、ギョロリと赤紫の瞳が動いて睨みつけてきた。
「誰かと思えば、歴代で一番能無しな大巫女失格人間じゃねぇか……」とエンダードラゴンは言う。「俺様を封印してきた奴らは皆お前ら憎たらしい大巫女の子孫らだった。だがお前がこの世に生まれてきてくれたおかげで! 今俺様は本来の力を取り戻せる! ありがとうなぁ、出来損ないの王女サマ?」
こちらを怒らせる言葉ばかり並べてきたエンドラに、私は大巫女の杖を強く握ることしか出来なかった。エンドラの言う通りだ。だからノゾミは、あんなにも簡単に連れ去られてしまった。
「……ノゾミはどこ?!」
出来るだけ強い口調で、私はエンドラにそう問い詰めた。するとなぜかエンドラは上空に向かって太鼓のような声で笑い出し、そうだったなと鉤爪を一本突き出した。
「お望みの王女サンはここで丁重に扱ってやってるよ」
とエンドラが指した空から、ノゾミが横になったまま下りて来るのが見えた。
「ノゾミ……!」
私は駆け寄ろうとしたが、エンドラはそれを阻止してノゾミを片手で鷲掴みした。
「そう易々とお前らに返す訳ないだろう。俺様の生贄となった後なら返してやってもいい……」
ドドォーン……!
言葉は途切れた。なぜならエンドラの顔の横に爆弾が爆発したからだ。