第45章 小さな誕生日会
「そういうことなら先に言ってくれればよかったのに」
とぼんじゅうるはボヤキながらもドズルが作ったケーキを囲う。おらふは素直にわーいと喜び、私の横に並んだ。
「誕生日やったんや! おめでとう、ユメさん」
「もう何日も過ぎちゃいましたけどね」
でも、嬉しかった。
誕生日はいつも、お城で豪華な食事が出て、ドズルのケーキよりも大きなケーキが出て、沢山の人にお祝いしてもらっていた。
けれども人生で一番嬉しかった誕生日はと聞かれたら、絶対この日だ。
「誕生日だったんですねぇ。それはそれはおめでとうございます」
恭しくMENがお辞儀をしてニコリと笑う。私とMENはまだ会ったばかりだからかちょっと距離は感じたが、彼が優しい人であることは、もう既に分かり切っていることだ。
「少しですが、これをどうぞ」
とおんりーが渡してきたのは三つのダイヤだ。どうやらおんりーは、ドズルがニワトリを追いかけっこする時に、私へサプライズで誕生日のお祝いをするという話を聞いていたみたいで、さっき採掘して来たもののようである。ダイヤは、お城には沢山あるけど、一番大事な宝石にすると誓って、私はこの宝石を胸に抱いた。
「いいなぁ、おんりーちゃんばっかり。俺もなんかプレゼント考えて置けば良かったなぁ」
とポケットの中を探すぼんじゅうるは少し悔しそうな顔をしていた。プレゼントなんて、今のこの時間が一番大切なんだけどな、と私は思ったけれど、ぼんじゅうるにはいつも助けられて来たから、少しだけ、ワガママを言いたくなったのだ。