第6章 唐突な提案
私は、お母様が何を言っているのかよく分からなかった。
一方の兵士は、身動ぎ一つせず、分かりましたと頷いただけ。ここにいる兵士なら私がどんなことを言われているか知っているはずなのに。
「でもお母様……」
私は言葉を続けようとした。けれどもお母様が体を起こそうとするから、私は体を支えてあげた。
「ユメは私の娘だもの。大巫女の力は絶対貴方の中に眠っているわ」とお母様は私の耳元で囁くように言った。「初級巫女試験、貴方成功したんでしょう?」
「それ、は……」
成功した、と言い切っていいのかどうか私には分からなかった。お母様の体が万全ではない今、聞いてもいいことなのだろうか。
言い淀んでいると、お母様は私の腕の中で微笑んだ。やはり成功したのですね、と。
それからお母様は自力で立とうとしたので私は止めた。お母様はそこに落ちている壊れた大巫女の杖を拾おうとしていたので、私が代わりに拾ってあげた。
杖はやはり、壊れてしまっていた。
持ち手はなんともないのだが、先端に嵌っていた宝石が粉々になっており、どう見ても修復不可能な状態だった。
「これは、大巫女の修行をすればまた直るわ」とお母様は真っ直ぐな瞳で言い切った。「本当は、最終巫女試験を終えた者だけが行くところなのだけれども……今は手段を選んでいられないわ」
お母様の言葉に私はドキリとする。最終巫女試験を終えていない私に、何か出来ることがあるというのだろうか?
「ユメ、おんりーと一緒にこの杖を修復して下さい。そして、勇者を探してあのエンダードラゴンの元へ行くのです」
私は、お母様に言い渡された言葉に困惑するばかりだった……。