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導きの巫女と勇者サマ御一行[dzl]

第42章 じゃれ合い


「……大丈夫ですか?」
「えっ」何を見抜かれたんだろうかと一瞬焦りながらも。「大丈夫です……」
 と私はなんとか言い繕うが、多分おんりーにはバレているのかと思われた。おんりーは何も言わずに離れたが、直後湖の方でギャハハと笑う声が聞こえて私は顔を上げた。
 湖畔では、ぼんじゅうるとおらふとMENがいた。確かぼんじゅうるとおらふは水を汲みに行ったはずだが、そこにMENが思い切り水を掛けて二人はべしょ濡れになってしまった。
「あ」
「大丈夫ですよ」
 駆けつけようとした私を引き止めるようにおんりーがそう言う。服が濡れているのに何が大丈夫なのかともう一度彼らを振り向くと、今度はぼんじゅうるがMENに水掛けをやり返しており、流れ弾でおらふにも掛かる始末。それからは三人で水の掛け合い合戦が始まったが、アレはケンカではないということは私にはすぐに分かった。なぜなら三人とも、笑っているからだ。
 私は肩の力を抜いた。
「私にも、ノゾミとああやってじゃれ合うことがありました」私は目を伏せた。「でも……いつからかノゾミは、私を突き放すような言い方を始めたし、私も私で、どこか他人行儀みたいに接していました」
 姉妹なのに、おかしいですよね、と半笑いでおんりーへ視線を投げたが、おんりーは笑ってはいなかった。真剣な瞳で、私の話を聞いていて。
「ごめんなさい、急にこんな話をして」
 なぜか見つめてはいけない気がして、私はおんりーから目を逸らして謝った。少しの沈黙があって、おんりーは静かにこう言った。
「話、聞くだけなら、いつでもいいですよ」
「え……」
 私の話を否定するでもなく、肯定するでもなく。ただそれだけを言って、おんりーは微笑んだ。彼はあまり表情がないように思っていたが、どうやらそうではないみたいだ。
「ただいま、ちょっと迷子になっちゃってて……ってあれ、僕お邪魔だった?」
 目の前に急に現れたように出て来たドズル。私はびっくりしたが、おんりーは特段驚いている様子なく、大丈夫ですよ、とドズルと受け答えする。
 ……やっぱり、表情少なめなのかな?
 野暮用とやらでどこかに行っていたドズルが、私の方を見て首を傾げた。私も大丈夫ですと答えたが、お邪魔だったって、どういうことなんだろうか……?
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