第36章 初めての農作業
「ノゾミさんの話はおんりーから聞いたよ。辛かったよね」とドズルは言う。「でも、悪いのはノゾミさんを連れ去ったエンドラだよ。ユメさんは何も悪くない」
「でも、もし私がちゃんとしていて大巫女の能力を得ていたら、ノゾミじゃなかったかもしれないんですよ? ちゃんとしていたら、エンドラだってすぐに封印出来たのかも……」
言葉が詰まる。自責の念がこんなにも私の中にあったのかと自分でも驚く程に。
私がずっと後ろ向きなことばかり言うからか、ドズルはふと顔を逸らした。それからうーんと唸ってこう言った。
「ちゃんとってなんだと思う? 僕はユメさんに会ったばかりだからさ、分からないけど、ずっと、ユメさんはちゃんと生きてきたんじゃないの?」
そう聞かれて、私は自分が今までしてきた数々の努力を思い出した。毎日あの巫女修行場に通って、毎日祈って、毎日巫女になる為に図書室で調べ物をし続けてきたあの日々を。
昔は胡散臭そうなまじない師に騙されて巫女になる為の本に大金払ってしまって叔母に怒られたこともあった。他にも、信じ難いようなことをやったり変なおまじないを唱えたりもした。今までそんな努力は報われなかったけど、私はいつも「ちゃんと」なろうとしていた。していたはずなのである。
「ありがとうございます、ドズルさん。ずっと、私はそう言われたかっただけかもしれません」もう涙は零れてこなかった。「元気出てきました! 私、明日も頑張ろうと思います!」
「はははっ、それは良かったよ。僕は何もしていないけどね」