第36章 初めての農作業
「今は、こういう状況で私は城を出ていますけど……みんなで畑仕事を初めてして、気付きました。私、どこに行っても役立たずだなって」
ずっと自覚はしていたはずだ。だけれどもそれを言葉にすると、私があまりにも無力だと思い知ってしまって、瞬きをしたはずみで溜まっていた涙が零れてしまった。私は慌てて瞼をこすった。
「すみません。泣いてちゃダメですよね」
本当は不安だ。でもそれ以上に、ノゾミに寄せられた期待や恐怖を思うと、私には涙を流す権限なんてないんだと考えてしまう。
「ユメさん」
ドズルはそう呼んで私の傍らに腰を下ろした。ドズルの声は静かで穏やかなのに、不思議と凛とした力強さを感じて、思わず聞き入ってしまうような魔力があった。
「僕はさ、こう思うんだよ」ドズルが言葉を続ける。「泣いたっていいと思うし、失敗だってしていいと思う。まぁ罪にならない程度にってことなんだけど」
「罪……」
でも、私が大巫女の能力を得ていなかったから、ノゾミが連れ去られたのでは?