第36章 初めての農作業
その後、ネコおじを始め、ぼんじゅうるたちは代わる代わる私に農作業のやり方を教えてくれた。ちなみに地面がぬかるんでいるので水溜まりを埋める作業もしなくてはいけなかったのだが、私は泥に足を取られるばかりでほとんど役には立たなかった。
それでもみんなで協力し、一面が畑の景色で埋まる頃には日没も迫っていて、泥だらけになりながらみんなで焚き火を囲って休んでいた。
ネコおじが持って来てくれたオニギリというものを食べている中、私はじっと、ユラユラし続ける炎を眺め続けていた。
「ユメさん、大丈夫? 疲れちゃったかな」
そこにドズルが声を掛けてきた。私はハッとし、渡されたオニギリを一口も食べていなかったことを思い出した。
「すみません、疲れているのは皆様の方なのに、私だけボーッとしちゃって」
「はっはっはっ、いやいや、そんなこと誰も責めたりしないよ」
「でも……」私は視線を落とした。「私、この前誕生日だったんです、十七歳の」
「え、この前誕生日だったの? 言ってくれたら何かお祝いしたのに……」
「いいんです」私は首を振った。「私はあの城では役立たずでした。巫女の才能すらないし、戦うことも出来ない。だから、昔から続くシキタリに従って、誕生日にあの城を出ていくつもりでした」
だから、お祝いなんてされても嬉しくなかった。あんなに煙たがられても、あの城が私の家だったし、両親といきなり離れて暮らすのも不安しかなかったけれども。