第35章 ぬかるんだ地
嬉々とした声のネコおじのあとについて行くと、何もない広い草原に案内された。ネコおじが言っていた通り、雨で畑のほとんどが流されたのか、いたるところに水溜まりが広がっていて、地面はぬかるんでいた。
「えっと、ここを、耕すんですか……?」
私は再確認のためにネコおじにそう質問をした。ネコおじは深く頷いた。
「そうじゃ。今若いもんはほとんど出稼ぎに出ていてのう、ワシら年寄りがもう一度耕すとなると大変なんじゃ」
「でも、ここ結構広いですよね?」
と言ったのはおらふだ。ネコおじはまた頷いた。
「そうじゃ。ここにはね、広ーい黄金畑があったのじゃ。ワシはもう一度、ここを黄金畑にしたくてのう」
「この広さの畑の分を、山神様が食べるんですか?」
半信半疑という様子でドズルが訊ねた。するとネコおじが、少し気まずそうに眉をひそめた。
「毎日奉納するからのう、広さは必要じゃ。だが、ワシらの分もね? ちょーっと必要だから」
ネコおじの言っていることは本当だろうし、きっと大事なことだ。だけど……。
「やっぱ帰りましょう」
「待て待ておんりー、ここは勇者としてね? 人助けよ、人助け」
冗談なのかなんなのか、帰ろうとしたおんりーの肩を掴んで引き止めるぼんじゅうる。私はなんだかそのやり取りが可笑しくてつい笑うと、みんなも笑い合って、空気が和んだ気がした。
「まずは言われた通りやるしかなさそうですね。ユメさんの妹さんが無事なのかどうか心配だろうけど……」
とドズルが私に向いてそう言った。それもそうなんだけど、城から出たことがない私は困惑だらけだった。
「この道具は、どうやって使うんですか……?」
私はあまりにも、世間を知らな過ぎたのだ。