• テキストサイズ

導きの巫女と勇者サマ御一行[dzl]

第34章 ビレッジ


 名もなき村は、ぐるりと山に囲まれた小さな集落だった。
 どこを見ても畑ばかりが広がっていて、時々木こりの家があるのか、薪を積み上げているところもあった。
 私たちは作業中の村人たちの視線を一斉に浴びながら、村長がどこなのか訊ねてその家へ向かった。この村のことや土石流のことを聞くには、村長から聞いた方が早いと思ったからだ。
「おお、やっと来たか!」
 村長らしき家の前までくると、何人かと談話をしていた人々の輪の中から老人が一人飛び出してきてこちらに歩いて近付いてきた。なんだろうと話を聞いてみると、老人はこう言い出したのだ。
「ワシはこの村の村長、ネコおじじゃ。みんなにはネコおじいちゃんと呼ばれておる」と老人のネコおじは話を続ける。「ここに来る途中、あの土石流を見ただろう? アレのせいで隣村からいつも来ている助っ人が来れなくての、困っていたのだ。オヌシら、サンディ王国から来た助っ人なのだろう?」
「え、違いますけど……」
 ぼんじゅうるたちは口々に否定を示したが、ネコおじの言葉は止まらなかった。
「何を言っておる。その立派な馬、凛々しいオオカミ! 体つきのいい若者と可愛らしいお嬢ちゃん……は農作業をするような子ではなさそうだな?」
 スラスラと淀みなく喋ったかと思えば、ネコおじは私に目を向けるなり少し困惑した。
「あの、私……」
 大巫女の国から来たユメです、と名乗れなくて口ごもっていると、ぼんじゅうるが前に出て名乗り出た。
「ぼんじゅーる、ぼんじゅうるだ! どーもです!」
 それから仲間の方を振り向き、四人も自己紹介するようにとアイコンタクトを送る。
「ども、ドズルです。そして!」
「おんりーです」
「こんちゃっちゃ〜、おらふくんやで♪」
 四人とも挨拶に慣れている様子で、私は気後れしまいとお辞儀をした。
「私は、ユメです。彼ら勇者たちと、エンダードラゴンを封印する旅をしています」
 今度は、しっかり言えた。
 と安心してネコおじを見やると、驚いた顔がそこにあった。
「まさか、勇者御一行様たちとは知らずに申し訳ない……となると貴方は、大巫女の国の……えーっと、ノゾミ王女でしたかな?」
「あ……」
 チクリとした。そっか。私の名前は、あまり知れ渡っていないんだ。
/ 109ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp