第33章 行手
翌朝。
サンディ王国の城にて一晩お世話になったあと、私たちは出発した。
目的地は農村地帯。もしかしたら誰かが土石流をなんとかしてくれてるかも、という微かな希望で向かったのだがそんなことはなく、私たちの行く手を大きな岩が阻んでいた。
「ドズルさんの魔法でなんとかならないの?」
とぼんじゅうるは言っているが、実はこの辺りの山は魔法石が産出されるところであり、魔法で破壊するのはかなり大変だということだ。魔法石は人々の生活を豊かにするが、一方で魔法使いにとっては石に魔力を吸われてしまい、不便な部分もあるようだ。
「私、知らなかったです……この世界に魔法石があるなんて」
と言うと、ドズルは明るく笑った。
「そうだよね。みんな、多くの人は知らないと思う」とドズルは話す。「大巫女の杖にあるその宝石も、魔法石なんだ」
「えっ」
私は驚いて杖の先端を見つめた。よく透き通る宝石が、太陽の光を反射してキラリと光った。
「あ、でも大丈夫。近くにあるだけなら僕の魔法を吸収したりしないから」
「そうなんですね……」
私はとりあえずそう相槌を打ったが、不安に思ったのはそんなことではないのだ。私はほとんど、大巫女の杖について何も知らないということ。そのことに私は、胸の奥でチクリとするものがあって明るい気持ちにはなれなかった。
「あ、こっちに道が続いていますよ」
近くを探索していたおらふが、別の道を指してこちらに手招きしている。近くには看板らしきものも見えた。
「ビレッジ……この先に村があるみたいですね」
看板の文字を読みながらおんりーがそう言う。
「村の人たちのところに言って、話を聞いた方がいいかもしれない……ぼんさん、どうします?」
ドズルが判断をぼんじゅうるに委ねる。
「よし行こう! 別の道があるかもしれないからね」
とぼんじゅうるが言いながら私に目配せをした。いいよね? と問い掛けているみたいだ。
「はい、行きましょう」
少しでも何か役に立ちたい。私はそう思いながら、頷いた。