第32章 次なる目的地は
確かに通り道が地図の中に描かれていて、そこを通ると畑のようなものがちらほらと見えた。回り道をと思ったが、周囲は高い崖に囲まれていて、別のルートを進むにはかなり遠回りしないといけなさそうだった。
「メンがいればなんとかなりそうなんだけどなぁ」
とぼんじゅうるが呟いた。私は、勇者一行が何人いるか知らないのだが、どうやらもう一人いるみたいだ。ならメンさんを探せばいいのでは、と私が言うと彼らは渋るような表情を見せた。
「メンはさ、荒らしなんだよね。結構厄介」
とぼんじゅうるが言うので私はますます困惑した。
「アラシって……畑荒らしとか……?」
まさか勇者一行の仲間の一人がそのアラシではないと思いながらも聞くと、その通りと頷きが返ってきて私は驚いた。
「そのまんまの意味よ、荒らしのメン」
「ははははっ、ぼんさんの剣も嵐を起こしますけどね」
ぼんじゅうるの言葉に続くようにドズルは明るくそう言うが、私は話について行けず疑問だらけだった。
「これはストームソードだから!」
とぼんじゅうるは背中の剣を引き抜く。ぼんじゅうるがその剣をあちこちと傾ける度、色々な色に輝いて不思議と目を引いた。
「興味あるの? ユメちゃん」
「え、あ、いや……!」
ぼんじゅうるが私の視線に気付いたのか、剣を軽く持ち上げながらそう問い掛けた。私は両手を前に振ってそんなことはないと言いたかったが、ぼんじゅうるが遠慮しないでと言うのでお言葉に甘えて勇者の剣を手にしてみたが……。
「わ、重い……!」
ずっしりと重い剣に私は重力に引っ張られるまま体勢が前屈みになった。こんな重いものを常に背負っていたのか。私は改めて、勇者仲間たちのすごさを感じた。
「そんなに重くないよ、普通普通」
と笑って私から剣を受け取ると、なんの気もない顔でぼんじゅうるはいつものように背中に背負った。それを見て思った。
私、こんなに腕力すらないのに城を出ようとしていたんだ。
自分の無力さを痛感するには十分過ぎる現実で。
「とりあえず、今日はもう遅いから、明日ここを出発しようか」
とドズルが切り出し、私たちはそれぞれ頷いた。