第30章 スケルトン家族
「綺麗な包み紙を使って、とても大事にされていたみたいですね」
「そういえば……この包み紙、見たことないデザインやなぁ」とおらふはポピーを胸から離してよく見てみた。「まるでドズルさんが使う魔法陣みたいで……あっ」
何か閃いたのか、おらふが私をちらりと向いてちょっと持っててと包み紙を外してポピーを押し付けるように渡してきた。
それからおらふは包み紙を広げた。そうして見ると真っ白な包み紙に円上のデザインが黄金色に描かれていて、確かによく見たら魔法陣みたいだった。
「アレイ、魔法の粉ある?」
「シャララン?」
おらふがアレイに話し掛けると、鐘の音のような鳴き声が返ってくる。何をするんだろうと私が見守っていると、すぐにはアレイは革袋をどこからともなく取り出しておらふに渡した。
おらふはその革袋を受け取るや否や、廊下へ戻って行く。私もついて行くと、おらふはなんと革袋をひっくり返して中に入っていた粉みたいなのをばら撒き始めたのだ!
「ちょ、ちょっとおらふさん、何をしているんですか?!」
「魔法陣を描いているんよ」
慌てる私に対し、落ち着いているおらふは、そう答えながら粉を撒き続けた。見ると蜂たちの群れは中には入って来ないし、オオカミもバルコニーでくつろいていで誰もおらふを止めようとしなかった。おらふの肩にいる蜘蛛も、おらふの行方を見守るばかりだ。きっと、おらふがこれから何をしようとしているのか、彼らは知っているのだ。私も彼らに倣って、おらふの行く末を見守ることにした。
おらふは、最初は粉で不思議な模様を描くばかりだった。時々床に置いた包み紙と睨み合い、それからまた粉を撒いていく。革袋はそんなに大きくもないのに、途切れることなく粉が出てきて見ているだけで不思議だった。
そして、おらふが最後に円を描き終わった時、それは起きた。
キラキラと水色に輝いた粉は、次の瞬間魔法陣となって浮かび上がり、中心に立つおらふを囲ったかと思いきや。
「え……」
私は息を飲んだ。目の前の光景が信じられず口元を両手で覆う。
「お久しぶりですね、おらふさん」
魔法陣から、骨の姿をした人間が現れたのだ。