第3章 絶望と恐怖
「お父様、お母様……」
「グゥオオオオオオオオ……!」
しかしその声は、耳をつんざく大きな咆哮によって掻き消されてしまった。
「えっ……」
私は言葉を失った。こんな鳴き声、聞いたことがない。
私が振り向くと、慌てた様子で一人の兵士が走り込んで来た。その様子に、私は一瞬で全てを察した。
「み、見たこともないドラゴンが城に……」
言葉は途切れた。
束の間には、バリバリと激しい音が響いて目の前の視界が塞がった。
それが天井が崩れてきたのだと知った時には黒く鋭いカギヅメが割って入って来た。
私はただ呆然と立ち尽くし、そこに現れた赤紫の瞳と目が合った。私は死を覚悟したがすぐには逸らし、黒いカギヅメはある者を狙ってどんどん伸びて行った……。
「きゃああ?!?!」
そう。黒いドラゴンの狙いは、私の妹、ノゾミだったのである……。