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導きの巫女と勇者サマ御一行[dzl]

第3章 絶望と恐怖


 最終巫女試験が行われているはずの王室へ急ぐと、玉座にはお父様とお母様、そしてその二人に向かい合うようにいたのはノゾミだった。
 代々最終巫女試験のためだけに王家の女性たちが着ていた真っ白な清めのドレスに身をまとっているノゾミは、両親の前で頭を下げたままそこに座り込んでいた。この状況では何が失敗だったのか、巫女試験を一度も達成していない私からしたら何も分からなかった。
「ノゾミ……」
「来ないで、お姉様!」
 声を掛けて近付こうとすると、ノゾミに一蹴されてしまう。ノゾミの背中は、震えていた。
「ノゾミ」
 とうとう、お父様が口を開いた。ノゾミは怯えているようだった。見るとお父様の表情は特段変わった様子はない。というか、私たちの両親は、特に怒ったり叱ったりする人ではないのだ。けれども……。
「……この城を、出ていきます」
 お父様が何か言うより早く、ノゾミはそう言った。すると、隣のお母様が声を発した。
「最終巫女試験に失敗したからって、この城を出ていかなくてもいいのですよ。そもそも、そんなのは古い習わしで今は別にしなくても……」
「クレア、古くからのシキタリを破るつもりか?」
「ですが……」
 お母様はお父様の言葉で口をつぐんでしまう。お母様は、歴代でも一、二位を争う程大巫女の才能に溢れた人で、落ちぶれた私や……巫女試験に失敗したノゾミの気持ちなんて分かるはずもないのだ。
 だからとはいえ、初級巫女試験に成功したかどうかも分からない私が出る立場もそこにはなかった。私は震える妹の背中を見つめることしか出来なかった。
 ノゾミは、出来損ないの私と違って多大なプレッシャーがかかっていたはずだ。その圧をずっと受け続けていただろうその背中は、今はもう小さく見えるただの妹の姿であった。私も何か言わなくては。妹を助けられるような、何かを……。
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