第23章 魔法使い
洞窟は、固められた砂で出来たようなところで、天井から砂が流れ出ていて今にも崩れそうだった。
「暗いねぇ……ドズさん、アレ出来る?」
と唐突に言ってぼんじゅうるはドズルへ視線を向ける。
「もうやってますよ」
何を? と私が聞くより早く、洞窟の中はふわりと明るくなった。振り向くとドズルの手中には赤い炎が灯っていて、これが魔法だ、と私は瞬時にそう思った。
「ドズルさんの魔法あったけ〜」
とおらふも言って洞窟の中へ進むので私も慌ててついて行く。シンガリはおんりーで、仕切りに辺りを見回していた。
「ここ、どこか見たことありません? ぼんさん」
「え?」
おんりーの言葉に、前から二番目を歩いていたぼんじゅうるが立ち止まる。明かりを持っているドズルはすでに私を追い抜かして一番前に出ていたので、そうかな? とドズルも戻って来て辺りを照らした。
「もしかして、母と旅に出た時に見た洞窟ですか?」
と私が問うと、ぼんじゅうるはうーんと顔をしかめ、おらふは首を傾げるばかり。おんりーへ視線を向けると、おんりーはドズルの方を見ていたのでその視線を辿ってドズルの方へ。
ドズルは明かりの魔法を近付けて壁の砂埃を払っていた。一見何もないような岩壁に見えたが、ドズルが何か呟いた瞬間、ゆらりと文字のようなものが浮かんできて私は驚いた。
「え、それは……」
「魔法の文字だね。前にクレアさんと旅に出た時はピラミッドにあったのは見たんだけど」とドズルは言い、急に拳を握った。「ユメさん、少し下がってて下さい。この魔法の壁を壊します」
「えっ、あ、はい……!」
私はぼんじゅうるたちより後ろに隠れた。三人はこれから何かが起こるだろう壁から私を庇うように立っていてくれている。城の中ではされなかったことだ。胸の奥がきゅっとなる。
さて、そんなことは置いておいて、魔法使いであるドズルは、きっと難しそうな呪文を唱えて壁を壊すのだろうと思いきや、その拳を思い切り後ろに引いて私は開いた口が塞がらなくなる……。
「オッス!」
ドドォーン……。
「え……」
ドズルは、パンチだけで魔法の壁を壊したのだ。