第17章 道中と野宿
「……あの、おんりーから聞きましたか?」
スープをいくらか飲んだあと、私はぼんじゅうるに切り出した。ぼんじゅうる知らないフリをしてくれているのか、本当に何も知らないのか、何? とこちらの顔を覗き込んだ。
「私、出来損ないなんです」私は、ずっと気にしていることを言葉にした。「大巫女の試験……最終試験を、一切受けてないんです、私」
「ええ、ほんとに?」
ぼんじゅうるは目を大きく見開いた。本当に知らなかったのかもしれないと、私は話を続けることにした。
「本当は、大巫女は私の妹がなるはずだったんです。私は、最初の試験すら全然ダメだったので……だけど……」
言葉は途切れた。続けられなかったのだ。大巫女の最後の試験に、ノゾミも失敗していた。果たして大巫女の跡継ぎは誰がやることになっていたのだろう。大巫女がいないあの国になって、滅亡してしまうのだろうか。
「大丈夫大丈夫。エンドラは倒すから」
軽い調子でぼんじゅうるはそう言い切った。私はぼんじゅうるへ視線を向けると、そこには笑った顔でこちらを見る勇者様の力強さがあった。
「ほんと、勇者様がいてくれて心強いです」
と私が言うと、大したことじゃないと言うかのようにぼんじゅうるは手を前に振った。
「ユメちゃんも俺のこと、ぼんって呼んでもいいのよ? 勇者様って呼ばれるのも嬉しいけどね」
「え、でも、勇者様は勇者様だし……」
「だってユメちゃんお姫様だしね?」
「私は……」
「ユメちゃんはお姫様だよ。大巫女の杖だってなんとかなる」
ぼんじゅうるは、私が大巫女の血筋を受け継いでるって信じているんだ。出来損ないの私を、知らないから。
「……ありがとうございます。私、頑張ります」
私は手元のスープを飲み干した。