第14章 獣使い
声にすぐさま反応したのはおんりーだった。兵士さながらの動きで(いいや、もしかしたら城にいる兵士たちよりも早い動きで)前に出て自分たちを庇ってくれているみたいだった。
一方のぼんじゅうるは肝が据わってるようで、声のした方を見つめたまま動かなかった。年齢も結構上みたいだし、落ち着いているのかもしれない。あまり城の外に慣れていない私ばかりが置いていかれるみたいだ。
「おーい、みんなどこ行ったんや〜」
と言いながら近付いてきたのは、馬に跨った白い格好をした男性だった。ぱっと見おんりーと同じくらい若い男性で、背中には見たことない長い杖を背負っていた。そして肩には大きなあの蜘蛛が乗っていて、私は思わず悲鳴を上げてしまった。
「あれ、こんなところに人なんて来るんや」と白い格好の男性が私たちの目の前で止まる。「すみません、ここら辺に僕の蜘蛛見なかったですか?」
「……おらふくん?」
そこにいたぼんじゅうるが、白い格好の男性にそう問い掛ける。すると、青い瞳の彼がぱっと大きく見開いて声をあげた。
「あ、ぼんさん!」
と笑う彼は無邪気そうにぼんさんに手を振った。ぼんじゅうるも同じく笑顔を返して横のおんりーを目で指した。
「こっち、おんりーだよ」
「え、そうなん?」
「久しぶりだね、おらふくん」
ぼんじゅうるに紹介されて兵士の兜を脱いだおんりー。ぴょんっと癖毛の髪が飛び出した。
「おお、おんりーも一緒やったんや。帽子被ってたから分からんかったわぁ」
独特な発音をする彼、おらふと呼ばれている人物を、私は全く知らなかった。どうやらおんりーやぼんじゅうると親しい仲のようだ。彼らは勇者とその御一行で、あちこちに旅をしたはずだから知り合いも多いのかもしれない。