第13章 旅へ
「大丈夫ですか」
すぐにはおんりーが駆けつけてくれた。まだソワソワしている馬を宥めるように代わりに手網を握る。私は大丈夫と答えながら、ぼんじゅうるがどこに行ったか訊いてみた。
「ぼんじゅうる様は……?」
「あれ、ぼんさんは……」
「助けて助けて!」
大きな声が森中に響いた。見るとぼんじゅうるは木の上にいた。どうやってそんな高いところに登ったのかは今は置いておいて、おんりーはぼんじゅうるのいる木の根元にいる大蜘蛛をガンナーで倒した。
「いやぁ、ありがと〜、おんりーチャン」
そう言ってホッとしたらしいぼんじゅうるからは笑顔が見えた。と思ったのも束の間、その右手にある剣を振ると、一瞬にして姿が消えた。
「いきなり来たからびっくりしちゃった」
とぼんじゅうるの第二声を聞いた時にはもうすぐそこにいて、私は驚いてしばらく声を出すことも忘れた程だ。
「ユメちゃん?」
と問い掛けられて私ははっとする。そうなのだ。この親しみやすそうな彼は一般人ではなく、勇者なのだ。瞬間的に木の上に乗ったり下りたりすることは、簡単なことなのかもしれない。
「それよりぼんさん、馬どうしました?」
遮るように、おんりーが訊ねた。そういえば、おんりーもぼんじゅうるも、先程乗っていた馬から離れている。辺りを見回しても近くに馬はいないようだ。
「いきなりおんりーチャンが馬から下りるから、びっくりしちゃって……どっか行ったみたいね」
と答えるぼんじゅうるはどこか朗らかとしている。そんな様子にはすっかり慣れたのか、半分諦めたようにおんりーがため息をついた。
「はぁ……じゃあ今から、自分たちは徒歩ですね」
「ええ、馬なしなの?! ユメちゃんの後ろに乗せてもらばいいじゃん!」
「ユメさんは王女様ですよ、ぼんさん。そんなことしたら……」
「あ、もし疲れたならこの馬どうぞ。私が歩きますので」
それくらいしか出来なかったから。
「ありがと〜、ユメちゃん」
謙虚なおんりーとは真反対のぼんじゅうるは、私の提案を快く受け入れて手網を受け取った。それを見て私が馬から下りようとしたら、麓の方から蹄の足音が聞こえた。
「おーい、どこ行ったんだよ〜?」
どうやら馬に乗った誰かが近付いてくるみたいだ。