第12章 勇者様
「よし、分かった」
だけど、ぼんじゅうるのその明るい声が、私の心を支配していたモヤを切り裂くように射し込んだ。
私はぼんじゅうるの方へ顔を上げる。真っ黒な眼鏡が、頭上の木漏れ日を反射させてキラリと光った。
「えっと……何が……」
「だから、エンドラ討伐でしょ?」
「で、でも杖が……」
「大丈夫大丈夫。なんとかなるって!」ぼんじゅうるはにこりと笑った。「ね、おんりーチャンがいれば大丈夫だって!」
とぼんじゅうるが言うと、少しはぼんさんも頑張ってくださいよ、とおんりーが冗談っぽく笑ってそう返す。それから歩き出したので、私ははっとして声をあげた。
「あ、あの、杖は……?!」
すると、ぼんじゅうるは、ああ、そうだったと振り向いた。相変わらずおんりーからは感情が読み取りづらい。
「杖は、なんとかなるっしょ。だってほら、クレアちゃんの時も途中で壊れてたしねぇ」
「え……」
その話は初耳だ。
困惑してここから動けずにいる私に、おんりーが付け足すようにこう言った。
「杖はユメさんが持っていてください。直す方法は旅をしながら考えます」
「旅……? えっと……」
「エンドラ討伐の旅! 仲間も探しに行かないとね」
私が返答に詰まっていると、ぼんじゅうるもそう言ってこちらを向く。ぼんじゅうるの声はそれなりに大きく聞こえるのに、それは怒鳴り声でも強い口調でもない、何か心を動かされるような優しさを感じた。
私は、決意して頷いた。
「分かりました。よろしくお願いします、勇者ぼんじゅうる」