第11章 困惑の状況
「すみません、ぼんさんは知り合いなんです」
「ぼんじゅう〜る、どーもです!」
とおんりーに紹介された男性は、ぼんじゅうると名乗りながら朗らかに笑う。私はつられて思わず笑みを返してしまったが、状況は未だ理解出来なかった。
「私は、ユメと言います。この国の王女で……」
とりあえず自分も名乗ろうと言いかけて、口を噤む。私は本当に、この国の王女なのだろうか。
「どうしたの?」
私がよほど暗い顔をしてしまっていたのだろう。ぼんじゅうるが不思議そうにこちらの顔を覗き見る。私は首を振った。
「いえ、なんでもないです……」
「やっぱ信じられないんじゃないですか?」と唐突に話し出したのはおんりーだ。「ぼんさんが勇者だって、誰も信じないですよ」
……え?
それが言葉になるより早く、ぼんじゅうはおんりーに食ってかかっていた。
「はぁ?! 俺こそ勇者っぽいだろ!」
と言い返したぼんじゅうの反応がさもおかしいのか、おんりーは声をあげて笑った。あ、この人こうやって笑うのか。ちょっと可愛く見えた気がした。
「だってぼんさんだし」
「なんだよそれ!」
とやり取りする二人。また私は置いてけぼりだ。まぁ昔からよくあることだったけど。
そう思っていた矢先、ぼんじゅうるが私の方を振り向いた。人懐っこそうな笑顔。笑うとちょっと幼く見えた。
「でも、ここにいるユメちゃんが助けてくれたからね。ユメちゃんがクレアちゃんの娘なんて、やっぱ二人とも才能ある巫女さんなんだなぁ」
とぼんじゅうるに言われて私は言葉を返せなかった。そして、こんなに笑っている場合ではないのだと胸がきゅっと苦しくなる。
目の前でエンドラに連れ去られてしまったノゾミの顔。怯えていたな、と……。
俯き加減になった私に、途端にぼんじゅうるは何かを察したかのように静かな口調で訊ねた。
「なになに、なんかあったの……?」
「連れ去られたんです、彼女の妹が」
私の代わりにおんりーが答えてくれて、ぼんじゅうはよくやく、事の重大さに気付いたみたいだった。