第11章 困惑の状況
「え……」
私は声を失った。樹が光っていたからそこにあった手みたいなのを引っ張ったらまさか人間が出てきた……? どういうこと?
私が立ち尽くしていると、私に樹から引き抜かれて? 地面に倒れ込んだその人がゆっくりと体を起こした。
「あ、そっか! 俺はこの剣の力で木に埋まっちゃって……」と言いながら、彼は私と目が合った。「アナタが助けてくれたの? ありがとう〜」
「あ、いや、私は……」
なんとなく光っていたから引っ張っただけだ、とすぐには出てこなくて私はしどろもどろになる。だけどその人は私の様子が気にならないのか、ニコリと笑って何度も感謝してくれた。それ程若い男性ではなかった。私のお父様くらいかしら……?
「あれ、そういえばアナタ……クレアちゃんにそっくりじゃない?」
「えっ」
「でもちょっと違う……? あれ、クレアちゃん?」
彼が一人でどんどんと話を進めて私の周りをくるりと見た。私はこの状況が分かろうとし始めていた。
「クレアは、私の母の名前です。私は、ユメと言います」
と私が名乗ると、彼は分かりやすく驚いた表情を見せた。
「え、クレアちゃんに子ども……? どういうこと……?」
それは私も聞きたいのですが……と思っていたところ、桟橋の方からおんりーが駆けつけてきた。
「光っていたから気になって来たんですが……え、ぼんさん?」
「え」
「おおー、おんりー! 無事だったんだねぇ」
「それはこっちのセリフですよ」
二人はまるで昔から親しかった仲のように話し出した。私は一人取り残されて理解が追いつかない。
「あのー……」
なんとか声を振り絞ってみたところ、二人は思い出したかのようにそれぞれはっとした顔をした。