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導きの巫女と勇者サマ御一行[dzl]

第9章 光


 大樹は根元にある真っ白な建造物を覆うように立っていた。きっとアレが杖を修復する場所だ。建造物があるなんて話までは聞いていなかったけれども、私はとりあえず近付いてみた。
 その白い建造物は、四本の柱に屋根があるだけのガゼボのようなものだった。そして真ん中には台座があり、そこには杖が置けそうな突起物がある。きっと、大巫女の杖はそこに置くのかと思われた。
 私は杖へ視線を向ける。危なくないように割れた宝石の部分は全て取り除かれ、破片は全て革袋に仕舞ってあったが、これが本当にすっかり元に戻るかは疑心暗鬼だった。
 恐る恐る杖を置いてみる。数秒の呼吸。変化は……なかった。
「うーん……」
 ここで何をしたらいいかおんりーからは聞かなかった。でも、今は休むべきお母様から聞き出すような心配は掛けたくない。だけど、心の奥ではふつふつと、気にしないようにしていたことが沸いてきて、それを少しでも認識してしまうと途端に心が落ち込んだ。
 もしかして、最終巫女試験を終えていない私が来たから何も起こらないのか、と。
 いいや、そんなことは今はどうでもいいのだ。私は気持ちを振り払うように台座を下りる。何か、杖を修復する方法のヒントがあるのではないか。そう思ってなんとなく大樹へ近付いた時にそれは起きた。
 まさしく、ぱぁっと音がしたかと思う程、大樹の幹が唐突に光り出したのだ。
 私は急いで大樹の元へ駆け寄った。近付けば近付く程光はますます強くなり、直視は出来ないくらいだった。
 そうして幹の前まで来た瞬間、未だ光り続けているというのに不思議と眩しくなくなり、その輪郭が見えてきたのだ。
「人……の形?」
 光の元は、樹の幹に埋まって片手だけこちらに伸ばしている人間の形のように見えた。それとも、光っているからそう見えるだけなのか、ただの大樹のコブなのか。
 私は深呼吸をし、祈った。
 エンダードラゴンを封印する力はなくていい、と。
 でも、ノゾミだけは助けたい……。
 そんなワガママが通じる相手なのかどうかも分からない。だけどここは祈るしかなかったのだ。お願いします……お願いします……!
 私は祈りながら、手のような形をした樹のコブに、触れた──。
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