第8章 大樹
大巫女の杖の修復場所がどこにあるのか分からないまま、私は馬に跨った。
移動は大体馬車だったが、今から私たちが向かう場所は険しい山道だとのことで、小回りのきく馬に乗って移動することになったのだ。
そして、前方にはおんりーが手慣れた様子で馬を乗りこなし、時折私がついて来ているか振り向いてはまた走らせていた。
彼は気遣い上手で本当に優しい人なのだと思うのだが、私は一つ気になることがあって馬を歩かせたタイミングで訊ねてみた。
「あの、質問いいかしら」
「なんですか?」
おんりーは馬を止めてこちらを向く。澄んだ緑色の瞳が、眼鏡を通して何かを見通しているかのようだった。
「護衛が……少ないと思うんだけども」
いくら私が出来損ないでも、護衛はおんりー一人だけだった。それとも私が出来損ないだから、護衛を一人だけにされたのだろうか。
「それは俺も思いました。けど、女王様がそうしろって言うから、ねぇ?」それからおんりーは向こうの山へ視線を向けた。「あまり人に知られないようにする為らしいです」