第1章 冗談なんかじゃない
何がどうしてそうなった。
どうしてさらに視野が狭くなってんだ!!
なんてお父さんに怒鳴り込みに行ったところで聞く耳もたず。
お母さんなんて。
『組の後継者問題は大事なこと。この家に産まれたからには覚悟なさい』
とか冷たい顔して言い放った。
ひとたび出て行こうとしたところで。
『あなたを探すためにどれだけ組員たちの仕事が遅れるのか考えたことはありますか』
なんて。
横に控えていた加賀谷にでさえ冷たく言い放される始末。
ま、じ、で!!
ありえねぇえ!!
なんなんだよほんとに!!
あたしにできる細やかな反抗と言えば。
自室に閉じこもるしかなくて。
だけどあたしが自室に閉じこもればみんなが心配してくれちゃうわけで。
かわるがわる誰かしら自室を訪れる毎日になって。
三園なんて『やっぱり俺じゃお嬢となんて釣り合いとれませんか』とかとかしゅんとしちゃうし。
いや別に三園が嫌わけでもなくて。
誰が嫌、とかじゃくて。
むしろ…………。
だから。
だから。
作戦を変えた。
「失礼しますお嬢」
「…………」
「…………お待たせして、すみません?」
夕食後、加賀谷を部屋に呼び出して、今に至る。
「ありがとう、勇吾、もういいよ下がって」
「は?あ、いやしかし…………」
「お嬢」
「何…………」
あ。
曲がりなりにも組長の娘であるあたしの部屋に。
しかも三園との縁談も上がってる娘の部屋に。
しかもこんな夜更け。
さすがに男と女ふたりきりになるのはかなり…………。
しまった考えてなかった。
「あ、いやあの…………」
あー。やばい泣きそう。
何やってもうまくいかない。
だって加賀谷いつも忙しいし。
さっき夕食の時見つけたから思わずなんにも考えずに呼び出しちゃった。
ほんとに。
これじゃため息もつきたくなるよね。
「…………もういい…………」
今日は戻って、そう、いいかけて。
「お嬢と話してくから、優吾おまえ先戻ってろ」
「え、でも」