第1章 冗談なんかじゃない
加賀谷の背中越しにちらっとこちらをみた優吾と目が合うけど。
すぐに加賀谷の背中に隠されて優吾の姿すら視界から消えた。
「…………わかりました」
廊下を歩く足音と一緒に、ドアが閉まる音が聞こえて顔をあげれば。
さらにもう一回、深いため息を吐き出す加賀谷に一瞬頭の血が下がってく感じがした。
「…………別に怒ってませんよ」
「…………顔、怖いもん」
「すみませんね、生まれつきなもんで」
ドカ、て。
端っこに、しかも床にあぐらかいて座る加賀谷の動作をただただ目で追った。
「で?何か?」
「え?」
「なんか用あったから自分呼んだんじゃ?」
「…………用、ってゆー、か。忙しいなら別に。」
「?用ないなら戻りましょうか?」
え。
「あ」
立ち上がる加賀谷を追ってソファから立ち上がり。
「待って!!」
思わず腕をつかもうと、して。
思いの外距離があったらしく腕につかまるどころか足がもつれてグラグラと視界が揺れた。
のと。
ガンって。
たぶんソファに倒れ込んだのが、ほぼ同時。
…………ガン?
あれ?
あたし別にどこもぶつけてない。
「…ってぇ」
「っ」
自分の真下にあるソファより固い何か、に気付いた瞬間。
顔から煙が出た。
…………気がする。