第2章 交際宣言致します
「…………今『誰』のこと考えた」
「へ?」
俯いたあたしを覗き込むように。
急に至近距離に加賀谷の顔が、あって。
思わず出した変な声に、無意識に口を押さえた。
「な、何…………」
今度は頭を撫でられて。
意味が正直わからない。
「…………戻りますか」
「そう、だね」
相変わらず手は繋がれたまま、一向に歩き出す気配のない加賀谷を伺い見上げる。
加賀谷も。
名残惜しい…………、て。
思ってくれてるのかな。
もう少し一緒にいたい、って。
だとしたら。
嬉しいな。
ひとり顔を綻ばせてにやける顔を持て余していれば。
隣で小さく漏れたため息。
の、あと。
漸く加賀谷が歩き出した。
「あ、加賀谷さん!!お嬢!!何してたんスかぁ、も、花火終わっちまいましたよー!!」
バカ高い声で向こうからブンブンと両手降って。
優吾がいち早くあたしたちを見つけてくれた。
「バカおまえ、せっかく買った食いもん全部持ってったろ」
「いて」
「お嬢と買ってきたんだよ」
「え、そんな混んでました?」
「たりまえだ、どんだけ人いんと思ってんだアホ」
加賀谷と優吾のやりとりを笑いながら組の人たちが、見てる。
のに。
加賀谷の後ろ手があたしの掌を離してくれなくて。
どーしよう。
こんな些細なことで泣きそうなくらいに嬉しくなる。
加賀谷に触れられることが。
触れている時間が。
こんなにも愛おしく感じる。
どーしよう。
加賀谷が。
好きで好きで仕方ない。