第1章 冗談なんかじゃない
「か、っ、加賀谷、が…………っ、加賀谷じゃない」
「そうですか?まぁ俺も。お嬢のこんな顔ははじめてみました」
「な、何…………っ」
親指が顎に掛けられて。
ツー、と。
親指と人差し指が、頬へと触れた。
ふにふにと皮膚の感触を楽しむように触れたかと思えば急に、ふ、って、笑って。
「かわいいな、って」
「!!!」
ぶわわわわわーっ、て。
全身の沸騰した血液、顔に集中。
何。
何何何…………っ。
「か、かがやが、デレてる…………」
やばい。
何、これ。
急に破壊力やば。
好き…………って。
好きな人も自分を好き、って。
すごい。
すごい、これなんか。
「…………お嬢、顔見えないんですけど」
「いや、無理」
目の前で両手交差して顔を隠すくらい、許してくれないかな。
これなんかもう。
まともに加賀谷の顔見るとか絶対無理だって。
「なんなんですかそれ」
「…………いやだって、なんか…………」
「なんか?」
「あ」
両手首がつかまって。
隠すものがなくなった情けない顔が、晒された。
「だから、いやだって…………っ」
絶対変な顔してる。
やけに顔、あっついし。
まわりの空気が暑いのか、あたしの呼吸が暑いのか。
とにかく熱くて。
熱くて。
おかしくなる。