第1章 溢れたイチゴみるく
給食を食べ終えた後、お父さんが迎えに来てくれてそのまま病院に向かった。
診察の結果は骨にヒビが入ってるそうで、暫くは松葉杖を使って移動することになった。
病院の外に出ると辺りは真っ暗闇。車に乗り込みながら空を見上げると満天の星空が広がっていた。
「帰ったらすぐ明日の準備をしなきゃなぁ……」
お父さんは車の運転をしながらぽつりと呟いた。
どうもお父さんは仕事が好きじゃないみたいで土曜日と休日は生き生きしてるけど日曜日の夜と月曜日の朝はぐったりしてる。
「明日も仕事なのにごねんね?」
いつもならビールを飲みながらのんびりとテレビを見ている頃だ。仕事は大変なのに、なんだか申し訳ないなと思いながらぎゅっと服の裾を掴んだ。
「そんなこと気にするなよ。そういえば、お前はヒーローになりたいんだろう?」
私は一瞬言葉に詰まった。
何故なら私がヒーローになりたかった理由は『範太』と約束したから。
「うん、なりたい」
それでも状況を悟られないように声を振り絞って嘘をついた。
「……お父さんの職場が無くなっちゃうかもしれなくてな……。もしかすると、は高校すら行けなくなるかもしれない」
ぽつりと呟いたお父さんの言葉は何処か悲しそうで、その声色が現実なんだと実感させられた。
「最近お父さんが仕事に行きたくない理由って、もしかしてお仕事が無くなっちゃうから?」
私がおずおずと聞くと、お父さんは一瞬遅れた後
「そうだよ」
と呟いた。そういえば私が小学校へ行くようになってからお父さんの同僚……主に範太のお父さんがうちの家に遊びに来なくなったと気がついた。
「お父さん、もしかして範太のお父さんと何かあったの?」
私達が子供の頃から仲が良いのもお父さん同士が仲良しで休日はいつも遊んでいたからだ。それは私達が産まれた後も変わらず、家族ぐるみで遊んでいたのに最近ではお父さん同士が顔を合わせることが無くなっていた。