第1章 溢れたイチゴみるく
「ッ――!!」
「わりぃ、。もう少しの辛抱だからね」
聞き覚えがある優しい声色が聞こえ思わず顔を上げると、そこにはいつものように飄々とした笑顔で微笑みかける範太の顔が。
――え、範太にお姫様抱っこされてる……?!
その瞬間、顔が熱くなるのを感じた。
恥ずかしい、でも嬉しい。むっちゃんに悪いから降ろしてもらいたいけど、ちょっとだけ範太を独り占めしたい。
私がプチパニックを起こしている間、範太は保健室へ向かって走っていた。
そのせいで色々な人達に見つかって騒いでいるし……、す、凄く恥ずかしい。
それでも嬉しくって胸がドキドキと高鳴る。
範太って細いのに、意外と力あるんだ。
「ほら、とーちゃく」
範太のお姫様抱っこを堪能していたら、あっという間に保健室に着いてしまった。学校の廊下が短く思えたのは今日が初めて。
範太が保健室のドアを開けると、私達を見た保険医の先生は目を丸くして驚いていた。
「……あら?どうしたの?!」
「コイツ足を挫いたらしくて」
「まぁ大変!!ベッドの上まで運んでくれる?」
こうして私はベッドまで運ばれ、範太は教室に帰ってしまった。
その後は保険医の先生が包帯で応急処置してくれた。
「今親御さんに連絡したからね、すぐ来てくれるって」
「ありがとうございます」
なんて先生に御礼を言ってたら、保健室のドアが開いた。
そして、担任の先生と一緒にご飯を運んでいた男子と範太……に続いてむっちゃんも入ってくる。
一瞬膨れ上がった気持ちはすぐに萎んでしまった。
「ほら、ちゃんと謝れよ」
範太はジト目で睨みながら、男の子の背中を軽く押した。
後ろにいるむっちゃんはご飯を運んでくれたみたい。
「……わ、わかってるって!最初ご飯の箱を落としたときに気づけばよかった。……その、怪我させてごめんな」