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奥まで愛して —お嬢様✖️溺愛執事—

第2章 完璧執事は高校生




「…………」


『目障りだ』


ハイセの目。
冷たかった。
あんな目、ハイセに向けられたことない。




「…………かえりたいなぁ」



ハイセが違う女を抱いてる世界。
ハイセが、あたしに見向きもしない世界。



ハイセが。
遠い、世界。



こんなのやだ。



こんなの、やだ。





「…………」



泣きそうになるのをなんとか耐えて。
カバン片手に教室を後にした。





この世界の、いいところ。
帰りの車がないところ。
朝の送迎の時帰りはいらない、って言えば「わかりました」の一言で迎えがない。
ほんの些細な、自分時間。
…………とはいっても。
知り合いなんて1人もいないこの世界で、有意義な放課後なんてそれこそ夢物語。
あたしの知ってる世界とは程遠い別の世界。
2日目にして早くもホームシック登場しちゃう。



トボトボとひとり何気なく歩いた道。
見つけたのは。
いつだったかハイセに買ってもらって初めて食べた、クレープ。
今では時々ハイセが作ってくれる、アイス入りがデザートの定番になってるクレープ。


「…………ああ、そっか」


誘われるように足を一歩動かすけど。
重要なこと、気づいちゃった。



「…………お金、持ってないんだ」



だっていつもハイセがお金出してくれてたし。
出かける時はいつもハイセがいて。
ハイセが。
全部してくれた。




「ほんと最悪」




ハイセがいないと何も出来ないなんて。




ひとりで歩いたってそんなの、ハイセがいなきゃ全然楽しくないじゃない。
あの時ひとりになりたかったのは。
ハイセから逃げて自分時間が欲しかったのは。
いつもハイセがあたしを見てたから。
どこかで何かあってもおきても、ハイセがちゃんと来てくれるから。
ハイセが、いるから。
不満も喜怒哀楽も全部、ハイセがいたから持てたのに。



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