第2章 完璧執事は高校生
「…………誰」
ハイセが、あたしにあんな態度とるなんてあり得ない。
誰あの人。
あんなの、ハイセじゃない。
ハイセなんかじゃない。
床にペタンと座り込みながら。
流れそうになった涙を右腕で拭った。
わかったことがある。
まずひとつ。
あたしは今16歳で、ハイセは18歳、つまり3年生。
和泉家嫡男で、言うなれば御曹司。
まぁまぁ、あたしの知ってる記憶通りと言えば、通り。
そしてもうひとつ。
まぁもともとあの容姿なわけだし。
あたしの知ってるハイセはさらに色気が増して大人の魅力、みたいなものが駄々漏れていたのに対し。
そのハイセを少し、いやかなり幼くしてあどけなさとゆーか垢抜け前のやんちゃな子供時代のハイセ、なわけで。
モテないわけが、ない。
噂ではいろんな女とっかえひっかえ、学校中の女ほぼほぼ2年生以上は食い散らかしてる、とか。
バカみたいな噂がたつくらいには、有名人。
そしてこっからが1番重要。
ハイセのこの情報、昨日と今日でおのずと耳に入ってきた。
…………昨日、と、今日。
つまり。
あたし一回寝たのに夢から覚めてないの。
パニックすぎると人間て、逆に冷静になるもんなのよね。
それでも半分はここは夢の中、って信じたい気持ちのがおっきいのだけど。
だってこの世界。
ハイセはあんなだし。
あたし、知ってる人1人もいないんだもん。