第1章 お嬢様、誘惑する。
「…………も、やだぁ」
悔しくて。
勝手に目頭が熱くなってくの、知られたくなくて。
両手で顔を隠す。
「たまには誘惑、されてよ、ハイセのばかぁ」
「されてますよ」
「え」
「毎日24時間、365日。いつもあなたに誘惑されてます」
口調が。
ハイセなのに。
ハイセじゃなくて。
懐かしさに。
身体の芯が濡れた、のを、感じた。
「だからこれを作ってもらったんです。あなたにだけ反応する薬を。俺なしじゃいられなくなるように、他のやつなんか目に入んないくらいに気持ちいいセックスできるように。さすがに原液は、中和されるまできつかったけど」
「最悪。変態」
「だから、それは褒め言葉です」
ハイセの指先が頬を滑っただけで。
燃えるみたいに熱い。
「最低」
欲しい。
欲しい。
ハイセが欲しい。
「なんとかしてよ、これ」
奥まで。
めちゃくちゃに犯して。
ドロドロに溶かして。
愛して。
欲しくて。
ハイセが欲しくてたまらない。
「————仰せのままに」
いつもの憎たらしい笑顔。
だけど。
最高に愛しく感じるあたしもきっとイカれてるんだ。