第33章 出逢いと別れ 中原中也
『本当はあの日死んでいたの。私にはもう帰る場所もなにもない、処刑するならさっさと済ませて』
太宰の鋭い視線にもは動じなかった。
「流石は裏の社会で育っただけあって肝が座っているねぇ。君のように凛として気品のある女性は中也のタイプにピッタリだ」
『ッ!彼には、、、黙っていて、、私は逃げたとそう云って』
「へー、中也にだけは知られたくないんだ」
この時初めては少し感情的になった。
『私が処刑されたと知ればきっと、、、悲しむ』
「裏切り者の処刑は当たり前のことだよ?」
『ええ、そうね。でも彼は優しいから、、、、きっと悲しむ。彼を悲しませたくないの。お願い、私を処刑するのは構わない。でも、、、中也さんだけには秘密にして』
「ふふ、判ったよ。約束するよ、君のことは秘密にしよう」
太宰は胸元から銃を取り出し銃口をへ向けた。
『ありがとう、、、太宰さん』
は覚悟を決め瞳を閉じ、一粒の涙を溢した。
「ずるいねぇ、、、最期に名前を云うなんて、、、」
バァン!
一つの銃声が部屋に静かに響き渡ったのであった。