第21章 堕ちる。 フョードル・ドストエフスキー
『フョードルくん、どうして、、、?』
「先ほどは申し訳ありませんでした。謝っても許されません。今なら僕は君を諦められる、、、。だから、早く逃げて下さい。でないとまた貴女を傷付けてしまう。」
そう云って微笑むフョードルくんの顔はあの時、大好きだった頃の彼の顔に戻っていた。
悲しそうに微笑む彼を見ると胸が締め付けられた。
自分のせいで彼を変え、そしてそんな彼を私は置いて逃げ出してしまった。
なんて勝手なことをしてしまったんだろう。
彼は私を愛してくれていたのに、、、。
心の中で迷いが生じた。
逃げるなら今しかない。
きっとこのチャンスを逃せば、もう二度と外には出られないだろう。
だけど、苦しそうな彼を置いてもいけない、、、。
彼との思い出が蘇った。
2人で本を読み、クラシックを聞く時間が大好きだった。
たまに外へ出かけて、夜景を見る時間も大好きだった。
"、愛しています。"
彼からの愛の言葉を聞くたびに胸が温かくなったのだ。
でもその大好きな時間は過去でしかない、、、。
あの時の彼はもう戻ってこない。
私は立ち上がった、、、。