第20章 良薬は口に逃がし 中原中也
『ご馳走様でした。とっても美味しかったです!』
あっという間にお粥を食べ切った。
美味しかったってこともあるが、中也さんが食べさせてくれたことが嬉しかった。
「そりゃあよかったぜ、じゃああとはこれだな、、、」
『げっ、、、い、要りません!中也さんのお粥で充分元気に!!』
彼の手には薬。
そう、私は薬が大嫌いなのだ。
おまけに粉薬。
1番苦手な分類、、、、。
身体はまだ少し熱いが、だいぶ回復しているので断ったものの、、、
「なに云ってやがる、ちゃーんと薬飲まねぇと駄目だろ?そんなに飲みたくねぇのか?」
必死に頷くと、彼は不思議な行動をしだした。
『中也さんっ!?』
なんと手に持っていた粉薬を自身の口へ入れたのだ。
唖然としている私に彼は近づき、、、、
『んっう、、、、、ごくっ。』
口内には苦い味が広がった。
っと思った瞬間、、、、
にゅるっと口内で何かが動いたのだ。
『ッんんぅ、、、はぁ、、、んぁ、、、』
「んっ、、、」
紛れもない、中也さんの舌だ。
久しぶりの甘い口付けに、心は高鳴った。
暫くすると唇が離れた。
「ちゃんと薬飲めたじゃねぇか。」
『無理矢理飲ませたくせに、、、、でも、、、』
「でも、、、?」
『いつもみたいに苦くなかった、、、、。凄く甘かった。』
事実だった。
甘く、深い口付けのおかげで薬の苦さなんて消えていたのだ。
「チッ、、、可愛いこと云いやがって、、、」
ドサっ
突然視界が天井に変わった。
『へっ、、、?』
「煽った手前が悪りぃ。』