第18章 恋愛小説 小栗虫太郎
判っていた、彼女は奴を忘れるためじゃなくて嫌われる女になる為に私に抱かれたことを、、、、。
ヨコミゾから嫌われれば、決別できると思ったのだろう。
私の側においたとしても、彼女は苦しむ。
利用して捨てればいいのに、優しい彼女のことだ。
きっと私を利用したことに罪悪感が生まれ、好きでもない私の側に居続けるはず。
そんなの私も耐えられない。
彼女の笑顔が好きだった。
だが、ヨコミゾが死んでからは一度も笑顔を見ていない。
きっと私がそばにいても、彼女を笑顔にさせることは出来ない。
ならば、彼女の前から姿を消そう。
そう思ったのだ。
彼女の前から姿を消し、時は経った。
あれから色々なことがあり、そして新しい出会いもあった。
今は私の友人の1人ポオの屋敷で身を隠し乍ら、ミステリー小説を執筆し乍ら平穏な日々を送っている。
ふとたまに彼女の幸せを願ったりなんかもしている。
そんなある日のことだった。
コンコンとドアのノック音が部屋に響いた。
「待ってくれ、もう少しで完成するんだ!」
然し、再びノック音が響く。
あまりにもしつこいので、仕方がなく扉を開く。
「なんだ!、、、、ッ!!」
予想外の人物がいたのだ。
『久しぶり、、、虫くん』