第1章 【僕にできること】
車の中で座ってるだけで息苦しそうにしている廉に
声をかけて横たわらせる。
まだ先かとも思ってたけど、
大事を取って連れて帰ってきてよかった。。
マンションのどこでαとすれ違うかわかんないから
共用のエレベーターは使えないけど、
うちのマンションにはヒート中のΩと、
そのΩに同乗する人だけが使える
非常用のエレベーターがあるから助かる…。
まぁ…、マンション側としても
エレベーターという名の密室で
ヒート期のΩと間違いでも起こされたら面倒だから
ウィンウィンのやつなんだろうけど。
「…んっ、」
おぶさったまま
俺の肩に頭を預けた廉が吐息をもらす。
溺れそうなくらいフェロモンが充満した密室で
耳元に感じる愛しい人の息遣いは
腹ペコ状態に大好物をあーんされてる状態で
正直、めちゃくちゃ我慢すんのしんどい…。
つーか、、
我慢してんの褒めてほしいくらいある!
廉じゃない適当なΩだったら
確実に欲望に任せて
エレベーターの中でカラダを貪ってる…
と思う。
そう考えると、このエレベーターは今までに
何組の情事を見てきたんだろ…なんて思えて
めちゃくちゃエロく感じてくるから困る苦笑
まぁ、実際…
そういう盗撮モノの動画もあるくらいだしな。
ただ、うちのマンションはセキュリティ的に
そういうのは絶対にない…とは思うけど、
外でのことに100パー信用はできないから。
それに、俺の背中にいるのは
他でもない廉だから…。
そんな危ない橋渡れるわけもなくて。
そんなことを悶々と考えてたら
俺の部屋のフロアに着いたらしく、
開いた扉をまたぎつつ
ぐったりした廉に声を掛ける。
「廉…、もうちょいで、部屋だから。
もう少しだけ、我慢してな…?」
「…ん、ありがとう。」
ようやくたどり着いた玄関で廉を背中から下ろし
靴を脱がせると、安心したのか
ぶわっと広がるフェロモンが俺を誘う。
自分の靴を脱ごうと上がり框に腰掛けると
俺のシャツの裾をくいっと引っ張って…
「…しょぉ、」
「ん?どうした?」
あぁ、もう!今日に限って何で脱ぎにくい靴
履いてんだよ!って朝の自分に苛ついてくる。
ゆらりとカラダを起こした廉が
後ろから俺に抱きついて…
「ここで、シよ。…あかん?」