第2章 【妊娠、出産編】
俺の麻酔は大丈夫やったから、元気な産声も
ちゃんと聞けたし、産まれたての
ハルとミヅキにも逢えたしよかったなぁと思う。
(海人はまだオペ室入れんから時間差になっちゃう
のは申し訳ないけど、そこはしゃーないもんな)
Ωの男は子どもは産めても乳腺はないらしく
勿論授乳もできんらしい。けど、初乳いう
産直後に出る母乳だけ出るらしく、それを吸わせた。
ちっこい口で、誰に教えられたわけでもないのに
俺の乳首を探し当てて一生懸命吸い付いて…
必死に生きようとしてるんやなぁって。
何があっても絶対に守ったるって…
今まで感じたことのない感情に自然と涙が溢れる。
*
出産に関してはオレは本当に何にもできなくて、
オペ室に向かう廉を見送ったオレは
ただ、ひたすらに祈る…。
そんなとき、オペ室から
2つの元気な赤ちゃんの産声が聞こえて…
オペ室から看護師さんが出てきて
「元気な男の子と女の子ですよ!」と教えてくれた。
「ありがっ、ありがとうございます…!」
自然とボロボロと涙が溢れてきて…
「ふふっ永瀬さんが、おっしゃったとおりですね!」
「廉が…何か言ってたんですか?」
恥ずかしい気持ちもあるけど、涙は止められなくて
涙声で聞く。
「『泣くやろうからすんませんけど、心配して
くれとるから、はよ伝えたってください。
俺も元気やって。最初のおっぱいも一生懸命飲んでた
でって。』とのことです!」
「は、恥ずかしぃ…でもほんとに、よかったぁ…」
「本当におめでとうございました!
でも、子育てはこれからが本番ですから…
永瀬さんと一緒に頑張ってくださいね!お父さん!」
肝っ玉母ちゃんみたいな看護師さんに
バシッと肩を叩かれる。
「…おとっ、お父さんって…」
「やだっ!髙橋さんしかいないじゃないですか!笑
とりあえず、このあと様子を見て回復室に移動します。
そのあとは、髙橋さんもベビちゃんに逢えますので
お声掛けさせて頂きますね!」
緊張が解けてオペ室前の椅子にガクンと倒れる
ように座り込むと、そのまま放心状態で…
気がついたときにはガラガラと廉のベッドが
オペ室から搬出されるところだったので、近寄る。
「れぇん…!お疲れ様!!い、痛い…?」
「バチバチに麻酔効いとるから今は、そんなに。」