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【戦国BSR】幸村の影武者の非日常的な日常集

第10章 お風呂に入ろう


避けた先を狙って返した刃が下から斜め上に振るわれれば、小助はそれを後ろに飛んで射程から外れる。切先すらかすっていないはずが、刃に押された空気が小助の鼻先をひっかく。
さらに距離をとろうと小助が下がれば、追う政宗が剣技で押してきた。

その背の後ろが壁であっても戦意を捨てることはない。視線は政宗から逸らさず、腕だけで壁際にある予備の木刀を引き抜き、構える。

「いいねえ。やっとやる気が出たか、真田の忍!」

政宗の口元が嬉しそうに歪む。こういうところは小助の主にも似た気質だが、まったく好ましく感じない。歯をぎしりとかみ合わせ難しい顔をしてみせる。

武器を得たとはいえ、小助の後ろは壁。

政宗が大きく足を踏み込み、両手で強く木刀を突き出した。それを予期していたかのように小助の木刀が迎え打つ。真っすぐ前に進む軌道に小助の刃がわずかに触れる。

歯を食いしばり、脇をしめ両の手で木刀を支える。火花が散るのではないかという衝撃が過ぎた後、政宗の切っ先は小助の頭の真横にあった。
小助が慌てて膝を折る。頭の上ギリギリを右から左、水平に刃が通り抜けた。

「やるじゃん!」

宗時の称賛の声に攻撃が止まる。そのまま木刀が引っ込められたのを目にして、ゆっくりと息を吐いた。
自身の木刀を杖にして立ち上がり、いそいそと政宗と距離をとる。どうやら終わりのようだが、存在そのものが危険物が近くにいるのは落ち着かない。

若干浅くなった呼吸を戻し、優等生の仮面をかぶる。

「先ほど拝見した型と同じでしたので」

そう。政宗の攻撃は、最初に渡した木刀で見せた動きと全く同じだった。
武芸こそ優れているとはいえない小助だが、変化にかけては兄貴分さえ舌を巻くほどだ。変化に必要な観察眼それをもってさえすれば、一度見た動きを覚えるくらいどうということもない。覚えてさえしまえば、あとは順序良くかわすだけだ。

「それならWarm upは十分だな」

『おーむあっぷ』意味はわからないが、気分が乗ったからもう一度ということだろう。動きがわかっていても、政宗は怖いが仕方ない。下手に機嫌を損ねて先ほどの二の舞はごめんだとばかりに、素直に構える。
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