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【戦国BSR】幸村の影武者の非日常的な日常集

第10章 お風呂に入ろう


「いやー、昨日は楽しかった!」

朝餉を終えた政宗と宗時は、すっかり慣れてしまった部屋でくつろいでいた。
腹が膨れても膨らまなくとも寝転ぶことしかできない政宗は意味もなく立ち続ける家臣を見上げる。
顎に手を当て、だらしなく脂の下がった顔つきが目に入り、眉を顰めた。
黙っていれば十分な美丈夫が哀れなものだ。この浅はかな考えを顔に出す癖さえ直せば、敵地で引っかけずとも奥州で選び放題だろうにと。

「なんだやけに戻ってくんのが遅いと思ったら、しっぽりやれたのか?」

「下品な言い方するなって。あの子、ふくちゃんとさ……はぁ~」

「もったいぶんなよ」

思わせぶりな様子を見せる家臣に苛々を隠せず、愛用の煙管を噛む。日頃の習慣をこなせば落ち着くかと思ったが、肝心の煙草がなくては余計に腹立たしさが増すだけだった。
宗時の方は元より隠す気などないようで、政宗に誇るように得意な顔を向ける。

「ふたりで一緒に洗濯よ。初めての共同作業っての? いやー俺ってば超洗濯上手で」

「ガチのしっぽりかよ、happyな野郎め。いいようにこき使われただけじゃねえか」

「自分は何もできなかったからって妬くなよ」

「妬いてねーし、羨ましくねーし」

煙管を咥えたまま、そっぽ向く。特に悔しがる理由はないが、耳に残る下手な南蛮語が腹の奥をむず痒くする。物珍しさから、”つい”からかってしまったが、政宗が暇つぶしに手をつけるほどの女だったかと問われると、それはない。愛嬌はあり小動物のような愛らしさはあったが、政宗の心を揺さぶるような美貌の持ち主とは言い難い。
と、そこまで思い出して、はたと気づく。あの女の顔、どこかで。

「よしっ! じゃあ今日も行くか!」

珍しく幼子のようにむずかる政宗。そんな主を見限り、欲望に燃える家臣は入口の戸を滑らした。

「はい、残念! 行かせないよ」

「うおっっとぉ!」

続く、どすんっという音と畳ごしの振動が政宗の意識を呼び起こす。思いもしない人物の突然の登場に、宗時が尻餅をついていた。

「んだよ、忍びかよ」

太陽を背に仁王立ちする忍。少しも忍んでない男を”忍び”呼ばわりしてしまった己に舌打ちする。

「えー、今日もふくちゃんのお手伝いしたいよー」

往生際悪く、尻餅ついた姿勢で畳を叩く。成人男性の子供染みた駄々を見下ろし、猿飛佐助は呆れたように頬をかいた。
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