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【戦国BSR】幸村の影武者の非日常的な日常集

第7章 おやつをたべよう


「うーん、けどなー。かすがちゃん優しいからなー。やっぱり俺様がやるか」

「絶対に嫌」

深い意味を持たないボヤキだったが、うめの返事は早かった。その顔は至極真面目。一寸どころか一分の隙も無い拒絶。
いつもの大げさな嫌がり方なら冗談にしてやれるが、ここまで本気で来られると佐助にも思うところが出てくる。小さなころから大事に大事に育てたというのに。今だってうめのために悩んでいるというのに。
佐助は、怒りを腹に押し込めて、わざと明るい調子を装った。

「お前が嫌でも無理矢理やるから、大丈夫」

唇を噛み、言いよどむうめ。実力で敵わないことは承知なのだろう。
恐怖と痛みを感じたくないのならば、ここからでも佐助に嘆願すればよい。佐助とてそれができればそれなりの扱いを考えないことはない。
ところが、口の端を上げ、どこぞの殿様を思わせる挑発的な笑みをみせてきた。

「そんなこと言うなら、365日朝昼晩、お館さまになるから!」

「おまっ、なんていう脅しを……うぇー、想像しちまった。そこはせめて旦那にしろよ」

武田信玄は尊敬すべき主の主。向ける愛はあくまでも敬愛。
間違ってもそういう対象とはなりえない。もし仮に強行するのなら佐助にとっても辛い修行となるだろう。
その姿を思い浮かべ佐助は顔を青くし、口元に手を当てげんなりとしてみせる。

「ケダモノ! 幸村さまだったら喜んでできるでしょう!」

「喜ばねえよ! 余裕でできるけど、喜んでたまるか!」

「喜びなよ! 幸村さまだよ!!」

途中で論点がズレたことには気が付いたが、佐助の手は止まらなかった。
この場でひん剥く勢いで、小花が散った着物の襟を掴む。その手を抑えるように掴むその顔は、珍しく泣き顔ではない。目の端を吊り上げ挑むような表情だ。
全身で訴えるは、喧嘩上等。
うめの主愛はいつものことだが、今日に限っては憎らしい。
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