第7章 おやつをたべよう
「旦那、悪いけど先に注文しといてよ。こいつにちょーっとばっか話があるからさ」
佐助に肩を組まれ、青い顔をするうめをちらりちらりと気遣うようにうかがう幸村であったが、佐助の早く行かないと限定の甘味がなくなるよの一言にあっさりとうめを置いていってしまった。
幸村が店の暖簾をくぐるのを見届けたのち、そのまま店の裏手まで引きずられる。うめとしても表でしたい話ではないので、頑張って踏ん張るような無駄に草鞋の寿命を減らす選択はしなかった。
「さーて、俺様の可愛い小助ちゃんは、なんでこんなところにいたのかなー」
佐助の手がうめの頭の上でお団子になっていた髪を乱す。戦闘用の手甲はないが、だいぶ力が入っているようでうめの頭皮は痛んだ。
「ごめんなさい」
「珍しいな。いつもみたく開き直んないの?」
いつの間にか乱れた髪は、佐助の手櫛で整えられ、後ろ頭に生える尻尾になっていた。幸村とお揃いのいつものうめの完成だ。
一旦佐助の手が離れたのを見て、うめは腰を折った。
「今日はうめが悪いから」
「今日だけじゃなくて、いつもだけどな。反省がてら何が悪かったか言ってみな」
佐助は己が結い上げた尻尾が気に入ったのか、感触を楽しむように手の上に滑らせる。
「くのいちの修行をサボって、段取り頼んだ佐助の顔を潰しました。ごめんなさい」
ため息を一つつくと、弄んでいた尻尾をおもむろに引っ張った。
「あだだだっっ!! ゆっくり、徐々に痛いっ!」
「俺様の顔を潰すのはいいけどな! お前の修行のために準備してた連中にどう申し開きするってんだ?」
「ごめんってば! ホント痛いからこれ!! 取れちゃうから!」
涙まじりに訴えるうめから手を離した。弾みで地面に膝から崩れ落ちるうめ。佐助は目をそらし自身の頭を掻き乱す。
「はぁー、っていけね、またため息ついちまった。俺様お前と出会って幸せ逃しすぎだろ」
「ひどい言いがかりなんだけど、うめがうじ虫でごめんなさい」