第6章 独眼竜が出てきたらどうしよう
政宗を無事に振り切った小助であったが、またしても受難にあっていた。
あばら家を飛び出したまではよかったが、しばらく行くと人の気配に気づいて、物陰に潜んだ。
揃いの青い着物に、黒い甲冑、ツンツン尖った髪、前を高くし、それ以外を後方に流したような髪(いわゆるリーゼント)。なにより醸し出されるこの柄の悪さは。
「さいあく。なんで奥州の連中がうちにいるの? 先輩方、国境くらいちゃんと見ててよう」
政宗に変化している今、見つかっても即座に命をとられる心配はない。
とはいえ、見つかったら大事になることはには違い。さらには政宗が追い付いたら今度こそどうなるかわからない。
「昨日からずーっと時間に追われてるかも」
「何をぶつくさ仰っておいでですかな、政宗様」
「どわっ!!」
背中からにゅっと渋面が顔を出す。
思わず尻餅をついた小助。それを見下ろす鋭い眼光、いかつい体に顔につけられた傷が迫力を増す。
竜の右目こと片倉小十郎。
「なんだよ、もう見つかっちまったのか」
なんてことない風を装い立ち上がり、不自然に見えない程度に距離をとる。
「ええ、探しましたよ。お出かけの際はこの小十郎をお供するよういつも申し上げておりますでしょう。この際勝手に真田に会いに行ったことは不問としますが。あなた様はいつもいつも……」
腕を組みくどくどと、その小言は留まるところを知らない。
普段の政宗の致すところとすれば当然ともいえることだが、これには政宗でなくともうんざりする。隙を突こうにも逃がすまいとばかりに、小助の視線の先を塞ぎにくる始末だ。袋小路にでも追いつめらたら本当に逃げ場がなくなる。ここは、政宗の物真似で素直に従っておくべきか。
「きちんと聞いておいでか!」