第6章 独眼竜が出てきたらどうしよう
「どこいくんだ?」
共寝した相手を引き留めるような甘い声で呟かれた直後、首がぐっと後ろに引かれた。小助がやっと膝を立てたというのに、それにより身動きが取れなくなってしまった。
背中まで伸びた後ろ髪を捕む男の手があった。不幸中の幸い、その髪を掴むだけで何もしないでくれているのは、紳士の情からか、意識が追い付かないからか。
どちらにしろ、髪を引かれるのは結構な痛みを伴うのでありがたい限り。
床に手を付き、手探りで隠しておいた小太刀を持ち出し、振り払う。
「おいっ!」
政宗は素早く手を放し、両腕で防御態勢をとるが、小助が狙ったのは己が後ろ髪。幸村と同じ色の髪が散らばる様に一瞬、男の目が奪われる。
再び本体に視線を移すと、蒼の羽織を纏う政宗自身の姿が片目に映った。
「はぁあ!?」
「悪いけど、これ借りてくわ!」
己の姿をした己ではない男がニヤリと口の端をあげ、立て付けの悪く歪んだ戸を蹴り飛ばした。
「おおいっ! マジで待てって! 待ってやるからちゃんと服着ていけ!!」
後を追おうとした政宗が手を付いて膝を折る。これを予期していたかのように片足に縄がかけてあり、柱に繋がれていたのだった。