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【戦国BSR】幸村の影武者の非日常的な日常集

第6章 独眼竜が出てきたらどうしよう


口の端を上げ、斜に構えた笑い方をすれば、小助が思い描く政宗の完成だ。こうなると幸村の装束のままが違和感になるが、それにはもう片方の目をつむった。

「Are you ready!」

政宗お得意の南蛮語で雷の気を高める。
横たわる政宗の心臓付近に手を置き、成功を祈る祝詞のごとく言葉を重ねた。

「Let’s party!」

両手に溜めた気を解き放つ。目が眩むほどの光が辺りを包み、雨粒を蒸発させる。
放たれた気が政宗の体が跳ね上げ、その体を雷撃が突き抜ける。
同時に発生した熱波が小助のその手に跳ね返るが、歯を食いしばってこらえる。技の使用者のくせに手負うなと佐助には怒られそうだが、初めて変化した人物での初めての技だ。使用できただけで及第点と言えよう。

光が収まれば、再びどんよりとした空気が戻った。

地形を変えるほどの衝撃が起きたというのに、焦げ目を残す爆心地で横たわる政宗は綺麗なものだ。
やれることはやった。後は本人の生命力にかけるしかない。

小助がその胸から両手を離すと、片目が薄く開く。
その顔がぐっと歪むと、口を大きく開き苦しそうに顔を歪ませる。

「がは……ッ! ぐうっ」

目が覚めたばかりの小助と同じように、地面を転がり、うつぶせになって咳を繰り返す。

「あーっははは、あはは」

それを見た小助はひっくり返って大きな声をあげて笑う。
小助の雷撃は、見事に政宗の心臓を動かしたのだ。
政宗の変化は解け、小助本人の姿のまま、泥濘に塗れて、それでも笑った。
笑い過ぎて目じりには涙が滲んだ。

「アンタ……うっ……」

ひととおり咳込んで落ち着いた政宗が、小助を睨みつける。
何かを言いかけ、そこで力尽きた。

「伊達殿?」

倒れた政宗に寄ると、規則正しい息遣い。体力が尽きたのだろう。川の氾濫に巻き込まれ、死にかけて、雷まで食らってこの程度で済んでるあたりこの男の悪運も強い。
取り急ぎの危険な状態を脱出できたが、ここがどこだかわからない以上、助けも期待できない。

弱った体ではささやかな雨ですら、少ない体力を奪う毒となる。早くどこか屋根のある場所へ。
政宗の腕を持ち上げて、元に戻す。
連れて歩き回るには、重すぎる。

後ろ髪引かれる思いで、何度か振り返りながらその場を後にした。
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