• テキストサイズ

【戦国BSR】幸村の影武者の非日常的な日常集

第4章 だけどちょっと休みたい


礼をひとつ述べて出ていく男を見送り、再び文机の前に陣取ると組んだ腕を頭の上に伸ばす。
一伸びして新たな気分で次の書礼札に手を伸ばしたところで、再度声がかかる。

「幸村様一つお伝えし忘れていたことがございます」

「なんでござる?」

「団子屋の主人より、新しい甘味ができたので幸村様にぜひと言付かっております。上田名物三種盛りとかなんとか」

「まことか! すぐに行……」

そこまで言いかけて、さっと、両手を頭の上にかかげる。
その手のひらが上を向いたと同時に木製の”たらい”がぴったりとそこに収まる。

突如、音もなく天井から落ちてきた”たらい”。
構えていなかったら、頭を直撃していただろう。

「幸村様?」

言葉を途中で切ったことを不審に思ったのか家臣の声がかかる。

「すまぬ、すぐには行くことができぬゆえ。また日を改めて行くと伝えてくれぬか」

「承知しました。あまり根を詰め過ぎぬようお気を付けください」

「心遣い痛み入る」

家臣の足音が遠ざかったのを確認し、たらいを床に置く。

「さて、才蔵よ。主の頭上にたらいを落とすとはどういうつもりだ」

音もなく現れる男。闇色の髪に同色の衣。猿飛佐助よりもよっぽど忍びらしい忍びであることを売りにする。真田十勇士が一人、霧隠才蔵その人である。
/ 77ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp