第1章 ❄︎大人になるということ。〜爆豪勝己
『爆豪、私ね。』
周囲に自分の正体が気付かれ大騒ぎになる前に、爆豪はの手をひき人気のない路地へと移動していた。
何も話さず。顔も見ず。ただ前だけを向いて歩いていたが、
不意にが言葉を発したため、立ち止まる。
「………」
振り返り、彼女を見ると。
『私ね、昔、爆豪のこと、好きだったんだと思う。』
「っンな、はぁ?」
ただでさえ、先程の、独占欲をそのまま見せたような行動をとってしまったことで恥ずかしさに支配されていたというのに。
突然彼女の口から発せられた言葉に、柄にもなく、唖然としてしまう。
何を言い出すかと思えば。そんな、潤んだ目で見上げて来るな。調子狂うだろうが…。いいや、彼女の行動に感情を振り回されるのなんて、日常茶飯事だったじゃないか。
ああ…、くそ。
我慢してる方がアホらしいだろうが。
「………だから?」
『ん?』
「だから、なんだよ。」
そう言いながら、ビルの壁に手首を押し付け、もう片方の手でするりと耳を触る。
『んっ…』
(抵抗、しねえのかよ…)
耳を触っていた手を顎まで滑らせ、親指で唇をなぞる。
(柔らけぇ…)
『あむ、』
「…っ!」
かあぁ、と、顔に、全身に熱がこもる。
は爆豪の親指をそのまま甘噛みし、
上目遣いで。
『今日、帰りたくない、かも。』
「…本気で言ってやがんのか。」
『爆豪は?』
「テメェが先に答えろや。」
『…私、爆豪に嘘ついたことある?』
「…………っ、ねぇよ。」