第1章 ❄︎大人になるということ。〜爆豪勝己
『少し飲みすぎたかなぁ』
「少しじゃなねぇだろ。帰るぞ。」
『先に外、出てていい?後で渡す』
「ああ。」
酔っていながらも、そういうところは抜かりねぇ、ともやもやしながら2人分の会計を済ませる。あんなに、ガキだったくせに。
そういうところ、とはつまり、自然に男に格好がつくような配慮ができることだ。爆豪もそれなりに、女性と食事や俗に言うデートを経験してきたが、なかなかできることではないだろう。
それなりに、というより女に困ったことはない
と言えるほど、様々な女性を見てきたが、は。
抜群だ。
かつて恋をしていた、天然で可愛らしい少女は 知らぬ間に妖艶で美しい、"いい女"になってしまった。
そうさせたのはやはり、彼女にもそれだけの経験があってのことだろう。
「ッチ……」
なぜこんなにイライラするのか。
まさかまだ恋が続いているなんてことはないはずだ。
彼女が、どんな男とどんな経験をしていたかなんて、自分には関係のないことだ…
会計を済ませ、ビルの外に出る。
「顔真っ赤じゃん、1人で帰れるの?てかお姉さん、めちゃくちゃ可愛いね。俺らと遊ぼうよ」
『ふふ、お口がお上手で。』
が、2人の男に絡まれているようだ。
一瞬…、ヒーローとしての意識が働いたのか。はたまた、独占欲、のようなものが沸き起こったのか。そちらに一歩踏み出すが…
彼女の、満更でもなさそうな顔を見て。
立ち止まった。
(別に、本人達がいいなら邪魔するこたねぇ。)
そうだ。面倒ごとは嫌いだ。
このまま帰ろう。
いつも通り、家に帰り、明日の仕事に備えるのだ。
『きゃ、…』
「えろ…」
1人に手を引かれ、もう1人に、腰に手を回され、おぼつかない足取りで歩かされる。
腰に回されていた手がだんだんと下に降りてゆく…
パシッ
『爆豪?』
畜生…
「あ?離せ、よ…、え」
「ねえ、あの人ってNo.1ヒーローの…」
「うそ!マスクつけてないけど絶対そうじゃんっ」
の腰に回されていた男の手を片手で掴み、もう片方の手で彼女の手首を掴んで引き寄せていた。