第3章 私の王子様
side.名前
「苗字さん。七海と申します。ご無事で何よりです」
夢で見ていた私の王子様。
その七海さんが目の前にいる。
実物の彼はとても素敵で、
私の心臓はドキドキしてしまう。
「この度は助けて下さり、本当にありがとうございました」
貴方のおかげで生きることが出来た。
でも、助かったはいいけど、
私はこれからどうなるんだろう?
施設とかに入るのかな?
「苗字さん。貴女はこれからどうしたいですか?」
漠然と考えていると、
同じような事を七海さんに聞かれた。
どうしたい…って、
そんな贅沢な悩みを持ってもいいのかな?
寝て、働いて、ご飯を食べる。
それ以外に望んでいいの?
子供の私には、
何も分からない。
でも…
「…私は………あの部屋には…帰りたくないです…」
家賃を払えないから、
出ていくしかないと思うけど…
あの部屋は怖い。
母との思い出が
詰まっているアパートだけど、
帰りたいとは思えないの。